

真面目にOL生活を続け、先年、ローンでマンションを購入したが、最近、勤務先の業績が悪くなり、給与が遅配となることも。
自身の旅行、グルメ、ファッションなどで使ったカードローンの返済もあり、経済的に厳しくなってきた。
債務整理を考えているが、わからないことばかりなので、法律相談に訪れた。
債務整理には、複数の方法があると聞きました。それぞれについて簡単に説明してください。



債務整理の5種類
借金の整理には5つの手段があります。
①任意整理、②特定調停、③個人再生、④自己破産、⑤過払い金返還請求です。
これらは、3つに仲間分けをすることができます。
①任意整理と②特定調停は、債権者との間で今後の返済額や返済方法を話し合うものです。
そのうち、弁護士や司法書士を代理人として話し合いをするのが任意整理で、簡易裁判所の調停委員に話し合いの仲介をしてもらうのが特定調停です。
次に、③個人再生と④自己破産は、裁判所に債務の処理を決めてもらう手続です。
裁判所に借金の減額と分割払いを認めてもらう法的手続が個人再生で、資産を処分して清算したうえで裁判所に残った借金の全額免除を認めてもらう法的手続が自己破産です。
ご参考:「自己破産」という呼び名ですが、実は破産申し立て手続は、債務者だけでなく、債権者が申し立てることも認められています。これを「債権者破産」と言います。これに対して、債務者本人が申し立てる場合を「債務者破産」とは呼ばずに、「自己」破産と呼んでいるのです。
⑤過払い金返還請求は、支払い過ぎた利息を返してもらうものです。債務整理にあたって利用されることが多いですが、債務を完済してしまった人でも、後から請求できますので、債務整理の場合には限られません。
5つの方法の特徴をまとめてみます。
債務整理の5つの方法と特徴
債権者との話し合い 返済額と分割弁済方法を協議する |
弁護士、司法書士 | ①任意整理 |
---|---|---|
簡易裁判所調停委員 | ②特定調停 | |
裁判所が債務を法的に処理する | 減額した上で、分割払い | ③個人再生 |
資産を処分して清算したうえで、残額を免除 | ④自己破産 | |
支払いすぎた利息の返還を求める | ⑤過払金返還請求 |
もう少し、詳しく見てみましょう。
任意整理
任意整理は債権者との話し合いです。債務者本人だけでもできないわけでありませんが、プロの貸金業者との交渉ですから、弁護士や司法書士といった専門家を代理人として依頼した方が良い結果が期待できます。
専門家に依頼した場合は、今後返済する総額を決めて、これを分割払い(通常は3年間払いから5年間払い)とする内容で話し合いがまとめられます。その際、将来の利息金はカットしてもらえる場合が多く見受けられます。
特定調停
簡易裁判所の特定調停手続を利用し、いわば裁判所に間に入ってもらい、債権者との話し合いをするものです。特定調停手続は、弁護士などを依頼しなくとも、債務者自身で裁判所に申し立て、調停委員の仲介によって、債権者と交渉を進めることができるように設けられた制度です。
特定調停を申し立てれば、裁判所が債権者に出頭を命じ、裁判所での話し合いを斡旋してくれます。任意整理の場合と同様に、将来の利息はカットして、残金を3年間の分割払いとすることが目標とされています。
個人再生
個人再生は、裁判所による法的手続です。減額した分割払案を裁判所に認めてもらうものです。
個人再生を申し立てる債務者は、債務の総額を減額したうえで、それを3年間(特別な事情があれば最長5年間)の分割払いで支払う計画を立案して、裁判所に提出します。これを再生計画といいます。
減額できる金額には一定の基準がありますが、任意整理や特定調停と異なり、利息だけでなく、借金の元金部分までもカットできる場合があります。
裁判所がこの再生計画を正式に認可すると、債権者がその計画どおりに返済をすれば、それ以上の責任は負いません。
個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類の手続きがあります。
原則は「小規模個人再生」という手続で、再生計画が認められるには、債権者から一定の異議が出されないことが条件となります。
例外に位置づけられる「給与所得者等再生」という手続では、サラリーマンなどのより安定した収入が期待できる債務者に限って、債権者の意見を問題にせず、裁判所だけで再生計画を認めることができます。
また、個人再生には、「住宅資金貸付債権に関する特則」(住宅ローン特別条項)という制度があります。これは、住宅ローンだけを他の債務と切り離して取り扱ってくれるもので、住居を失うことなく債務整理をすることが可能な制度です。
自己破産
自己破産は、債務者の資産を処分した代金を債権者への返済に充てて清算し、支払い切れなかった残債務の支払義務は免除する裁判所の法的手続です。
資産処分の代金を各債権者の債権額に応じて配当することで債権者間の不公平をなくし、支払義務の免除で債務者の経済的更生を図る制度です。債務整理の最終手段と言えるでしょう。
過払い金返還請求
借金の返済にあたって、利息制限法の利率を超えた利息を支払っていたときは、支払い過ぎた金銭として、債権者に返還を求めることができます。これが過払い金返還請求です。
どのような債務整理の方法をとろうとも、債務額の調査にあたって、利息制限法の利率に基づいた再計算を行います。これを引き直し計算といいます。過払い金があれば、この引き直し計算によって判明します。そのときには、返還を求めたうえで、さらに債務整理を進めてゆくことになるのです。
ただし、特定調停では、簡易裁判所は引き直し計算によって、過払い金返還請求請求権の有無までは調べてくれますが、その返還請求は担当してくれません。この場合は、別途、特定調停の手続外で請求する必要があります。


弁護士としても、最低限の知識もない方に、こちらの選んだ方法を押しつけるようなことはできませんから、さらに各方法の内容を知っていただきたいと思います。
なお、各債務整理方法の詳しい内容は、それぞれ別の記事をご覧下さい。
特に債務整理には情熱を傾けており、依頼者のためには採算を度外視して、熱くなってしまう癖がある。