自己破産で借金の免責が認められないのは、どのような場合ですか?

ゆき
自己破産の申し立てが認められれば、どのような場合でも、借金を返済しなくてもよくなるのですか?
しんじ先生
いいえ。自己破産による免責は、強力な効果ですので、それを認めるための条件が厳格に定められています。
まず「免責不許可事由」がないことが必要です。次に免責を与えたとしても、その効力は「非免責債権」には及びません。

免責不許可事由がある場合

免責不許可事由がある場合

免責は、債務者の経済的更生のための特別な特典ですから、不誠実な者には認めることはできませんし、政策的観点から制限される場合もあります。

個人の自己破産との関係で知っておいた方が良い、免責不許可事由の代表的なものをあげておきましょう。

  • ・債権者を害する目的で、破産手続によって債権者に配当(返済)されるべき財産を、隠したり、壊したり、財産の価値を損なうようなことをしたり、ただで他人にあげてしまったりした場合
  • ・破産手続が開始されるのを遅らせる目的で、ヤミ金などから著しく高利の借り入れをしたり、すぐに売却してしまうつもりでクレジットカードで商品を購入し、安く売ってしまったりした場合
  • ・債権者のうちの特定の者にだけ、特別に有利な内容の返済をしたり、担保となるものを提供したりした場合
  • ・破産申立ての1年前以降に、もう返済などできない経済状態であるのに、嘘をついて、借金をしたり、分割払いなどで商品を購入したりした場合
  • ・「ギャンブル」、「浪費」などによって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を背負ったりした場合
しんじ先生
これらは、いずれも債権者の利益を害する不誠実な行為と言えるので、免責の特典を与える必要がないとされているのです。
ゆき
厳しいですね。ただ、借金の返済が苦しくて自転車操業になり、カードで商品を買ってネットオークションで売ってしまったり、キャッシングして返済に充てたりしてしまうことはよくあると思います。そのような場合も一切、免責されませんか?
しんじ先生
いいえ。程度問題です。免責不許可事由があっても、事情を総合して考慮し、債務者が悪質とまでは言えないケースでは、裁判官の判断で免責を認めることができます。これを裁量免責と呼びます。
ギャンブルや浪費も、「著しく」財産を減少させたとか、「過大な」債務を負担した場合であって、初めて免責不許可事由と判断されます。
ですので、借金の原因の中にブランド品の購入やパチンコ代があったとしても、それだけで免責不許可となるわけではありません。
さらに、次のような行為も免責不許可事由です。
  • ・破産申立の手続で、裁判所に虚偽の書類を提出したり、虚偽の説明をしたり、説明を拒否したり、破産管財人の仕事を妨害したりした場合これは裁判所を騙すような行為ですから、言語道断です。
  • ・過去7年以内に、破産をして免責を受けたことがある場合など短期間のうちに何度も免責の特典を認めることは、免責を狙って借金を繰り返すようなモラルハザードを引き起こす危険があるからです。

非免責債権は免責の対象外

非免責債権は免責の対象外

首尾よく免責が認められても、債務者の全ての債務に効力が及ぶわけではないのです。免責の例外となるのが、非免責債権です。

非免責債権の代表例は次のようなものです。

  • ・税金(国税、地方税)、国民健康保険や国民年金の保険料、罰金
    これらは、政策的な観点から免責できません。
  • ・悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権
    不法行為とは、他人の権利、利益を違法に侵害して損害を与えることですが、「悪意で加えた」とは、積極的に他人に害悪を及ぼそうとした悪質な場合に限定されます。免責させる理由はありませんね。
  • ・故意、重過失によって、人の生命身体を害した不法行為による損害賠償請求権
    典型は交通事故や殺人事件の場合です。免責を認めないのは被害者救済のためです。
    但し、殺人は論外ですが、交通事故などの過失犯は、多くは非免責債権とはされないと考えられてきました。
    というのは、ここに言う「重過失」とは、故意に匹敵するほどの著しい注意義務違反のある場合に限定されると考えられ、酒酔い運転、無免許運転、危険運転致死傷罪に該当する危険運転などだと言われていたのです。
    しかし、最近、そのような悪質なケースでなくとも、交通事故の損害賠償債権を非免責債権と判断した裁判例(東京地裁判決平成28年11月30日)が現れています。
    これは、自転車と歩行者の事故で、歩道上であること、自転車のスピードが原付バイクの法定速度に達していた危険な速度であったこと、無灯火だったこと、進路前方や左右の安全確認を怠ったことなどを、故意に相当するほどの重い過失と評価して、免責を否定したものです。
  • ・養育費、婚姻費用分担請求権など親族間の各種扶養義務に基づくもの
    これらは、受け取る債権者(妻や子など)の生活の糧なので免責対象外です。
  • ・債務者が、わざと債権者名簿の記載からはずした債権
    債務者は、破産申立ての際に、裁判所に債権者名簿を提出します。裁判所は、この名簿に基づいて、債権者に対して、破産手続が始まったことなどを通知します。これによって、債権者は意見を述べるなどの機会が保障されます。
    ところが、債権者名簿に記載がなければ、債権者は手続に参加することができません。そこでわざと名簿に記載しなかった債権者については免責の対象外としたのです。
ゆき
自己破産の免責も万能ではないことはよく分かりました。免責されない可能性も頭に入れて債務整理方法を考える必要があるのですね。
しんじ先生
そうですね。ただ免責不許可事由があっても、よほど悪質でない限りは、裁量免責を認めるのが実務の運用です。心配な点がある方は、まず弁護士や司法書士に相談することです。
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