自己破産にはどのようなメリット、デメリットがありますか?

自己破産のメリット

自己破産のメリット

ここで、自己破産のメリットをまとめておきましょう。

取り立てが止まる

自己破産の申立て代理人を弁護士や司法書士に依頼をし、貸金業者へ受任通知が送られると、以後は、代理人以外への取り立てや連絡は禁止されます。ゆっくりと落ち着いて破産申し立ての準備が可能です。

もっとも、これは債務整理の代理人が就任したことに伴う効果ですから、自己破産だけのメリットというわけではありません。

原則として全債務が免責

免責決定という強力な効果があります。ただし、免責の効力が及ばない非免責債権があることは注意してください。

自己破産のデメリット

自己破産のデメリット

ゆき
自己破産には免責という強いメリットがありますが、デメリットはないのでしょうか?
しんじ先生
いいえ。一切デメリットがない債務整理手続きというものはありません。しかし、自己破産が他の債務整理と比べて格別に強いデメリットがあるとも言えません。
次に自己破産のデメリットを紹介しましょう。

ブラックリスト

自己破産を手続の利用は、信用情報機関のブラックリストに登録されます。ブラックリストといっても破産者のリストがあるわけではなく、手続の事実が信用情報機関のデータベースに登録され、一定期間は抹消されないということです。
登録されている間(5年~7年)は、金融機関からの新たな借り入れなどは事実上困難となります。
なお、ブラックリストについて、詳しくは別記事をご覧下さい。

官報に掲載

破産手続の事実は官報に掲載されます。官報とは国の発行している新聞で、新しい法律の公布などを国民に周知させるためのものです。日本全国どこでも手に入り、誰でも読めるものです。

しかし、実際、官報を読んだ経験のある一般の方はほとんどいないはずです。どこで読めるのかも知らないことが普通です。ですから、官報で破産をしたことが周囲の人にわかってしまうことは、ほとんど考えられないのです。

全債権を平等に扱う必要

任意整理や特定調停のように、債権者との話し合いを行うという場合には、自由に相手方を選ぶことができます。貸金業者だけを相手方にして債務整理を行い、家族、親戚、友人、勤務先からの借り入れは、今までどおり返済を続けることも可能です。

しかし、自己破産では、すべての債権者を平等に取り扱い、裁判所にその存在を届出しなければなりませんから、相手を選ぶということはできません。

たとえ家族、親友、親戚からの借り入れでも、それだけを特別に破産手続から外すということはできません。もしも、特別扱いをしたことが裁判所に発覚すれば最悪の場合、免責を認めてもらえなくなります。

資産処分が必要

自己破産は債務者の資産を処分してお金に換え、これを債権者に配当することで債務を精算する手続です。資産は処分しなければならないことになります。これは免責という強力な恩恵を与えてもらう代償だということもできます。

ただし、債務者の資産は何もかも処分されてしまうというわけではないのです。
資産のうち、お金に変えて配当に回さなくても良い財産を「自由財産」と言います。

例えば裁判所の破産開始決定以後に債務者が働いて得た収入はこの自由財産として、債務者が自分の生活に自由に使うことが可能です。

また、99万円までの現金を持っている場合、これも自由財産として取り扱われます。

さらに、現金以外の資産は、その資産価値が20万円以上と評価される場合であって、初めて処分の対象となるので、20万円未満の価値しかない資産は持っていてかまわないわけです。例えば、19万円の価値しかない中古車と預金19万円を持っている債務者は、どちらも処分されることはありません。

更に、家財道具などの生活必需品は処分の対象とはなりません。

このように自己破産をした場合であっても、生活に必要な現金、今後の収入、生活道具は奪われることはないのです。

自己破産は債務者の経済的な更生を図るための制度であって、制裁を加える制度ではありませんから、債務者が生きていけなくなるようなことにはならないのです。
しかし、不動産、高額な自動車、宝石、貴金属類、有価証券類などを所有している場合には(ほとんどの場合、資産価値が20万円以上ですので)処分の対象となります。これら資産は管財人の管理下に移されて、処分されるのです。

ゆき
資産を処分しなくてはならないのは、とても大きなデメリットですね。私も、せっかく買ったマンションを手放すことになるのかしら……
しんじ先生
たしかに資産を処分しなくてはなりません。しかし、自己破産をしないまま放置すれば、債権者らから個別に強制執行を受けたり、住宅の担保権を実行されたりして、結局、資産は処分されてしまいます。結果は同じことですね。
しかも、その場合は、残債務の支払義務は残ったままという最悪の結果です。
そう考えると、資産の処分は自己破産のデメリットと表現するのは、不正確な言い方かも知れません。
ゆき
なるほど。資産の処分は、返済ができない以上、いずれ避けられなかった結果に過ぎないわけですね。

職業制限、移転・旅行に許可が必要

破産開始決定がなされると、債務者は一定の職業に就く資格を失います。
例えば、弁護士、公認会計士、税理士、会社の取締役、宅地建物取引士、警備員、パチンコ店店長には就任出来なくなります。

ただ生涯その資格を失うというわけではなく、手続が終了すれば、制限はなくなります。

また破産手続中は、裁判所の許可無く旅行をしたり、住居を移転したりすることはできません。もしも無断で旅行や転居をしたことが発覚すれば、免責を受けることができなくなる危険性もあります。

ただし、これらの制限は、債務者と破産管財人が連絡が取れなくなり、管財人の業務が円滑に進まなくなることを防止することが主目的なので、きちんと裁判所に届け出をすれば問題なく許可してもらえます。
また、管財人が選任されない同時廃止事件ではこのような制限はありません。

保証人に迷惑

免責の効果は、破産を申し立てた、その債務者本人にしか及びません。保証人の責任には法律的には何の影響もありません。

そもそも保証人の責任は、債権者が本来の債務者(主たる債務者)から返済を受けられない場合に、保証人に請求するためのものです。これを人的担保といいます。

債務者本人が破産した場合には、債権者は当然に保証人に返済を迫ることになります。保証人がこの責任を免れるためには、今度は、保証人自身が自己破産しなければなりません。

このように、自己破産を申し立てることは、確実に保証人にとって迷惑がかかることです。自己破産を選択する場合は、事前に保証人に説明をして理解を得ておくことがおすすめです。

パスポートを失う、会社を解雇される、全財産を失うなどの噂は虚偽の都市伝説に過ぎない

ゆき
自己破産すると、パスポートを失って海外旅行ができなくなるとか、会社を解雇されるとか、全財産を失うとか、いろんな話を聞きます。
しんじ先生
それらは、ただの都市伝説で事実ではありません。
全ての財産を失うわけではないことは先に説明をしたとおりです。
またパスポートもなくなりませんし、破産手続中であっても裁判所の許可を得て旅行をすることは可能です。
会社員が自己破産をしたからといって、会社が解雇をすることは、解雇権の濫用として無効な解雇となりますので心配ありません。