個人再生で認められる債務の減額には限度があるそうですが?

ゆき
個人再生は、サラリーマンが利用できる手続と、そうでない自営業者などの人が利用できる手続の2つに分かれていると聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
しんじ先生
それは、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの手続のことですね。この2つは、厳密に言うと、将来の収入が安定している度合いによって利用できるかどうかが分けられたものですが、サラリーマンか否かで分かれるというのは、おおむね合っていると言えるでしょう。
ゆき
収入の安定の度合いによって分かれるというのは、どういうことでしょうか?
しんじ先生
個人再生の3つの特徴のうち、「減額して、分割払いをする制度」であることを思い出して下さい。
ゆき
サラリーマンは、収入が安定しているから、分割払いの約束を守れる可能性がより高く、特別な手続きを選ぶことができるということですか?
しんじ先生
大雑把に言えば、そうなります。それが「給与所得者等再生」という手続で、それ以外の場合は「小規模個人再生」という手続きです。法律の位置づけとしては、個人再生制度の基本は「小規模個人再生」であり、その特別な場合が「給与所得者等再生」となります。

「個人再生」の2つの手続きの考え方

対 象 分割払の約束
(原則手続)
小規模個人再生
反復継続した収入がある人 約束を守れる可能性がある
(特別手続)
給与所得者等再生
サラリーマンの給与のように定期的で、安定した収入がある人 約束を守れる可能性がより高い
しんじ先生
それでは原則である小規模個人再生から、内容を説明してゆきましょう。

小規模個人再生

まず、小規模個人再生を利用するには、次の条件を満たすことが必要です。

①将来において反復または継続して収入を得る見込みがある個人であること。
②債務の総額が5000万円を超えないこと。

この2つの条件について説明します。

①反復または継続して収入を得る見込みのある者

次のような場合が該当します。

  • (ア)喫茶店や八百屋のように日銭の入る個人事業主
  • (イ)工場や問屋のように継続的に稼働している個人事業主
  • (ウ)年金生活者
  • (エ)サラリーマンももちろん含まれます

他方、次のような者は、反復または継続して収入を得る見込みがあるかどうか、ケースバイケースの判断となります。

  • (エ)農業者、漁業者、その他季節などによって収入が大きく変動する者
    個人再生では、分割払は最低3ヶ月に一度行わなくてはなりません。そこで、少なくとも3ヶ月に1度は収入が期待できるか、収入の間隔が3ヶ月を超えても、蓄財をしておくことで3ヶ月に1度の返済が十分可能である場合ならば、条件を満たすと言えます。
  • (オ)不動産仲介業者のように不定期の収入の者
    成約すれば大きな収入が得られるものの、まったく収入がない状態が続く場合もあります。そこで、過去の収入実績から、3ヶ月に一度の返済が見込めるかどうかを判断することになります。
  • (カ)アルバイト、パート
    勤務している間は、サラリーマンと同じ給与所得ですが、短期のアルバイトなどでは今後の3年間にわたる分割弁済の可能性が認められません。アルバイトやパートでも長く働いてきた実績があるなどの場合であれば、条件を満たすと言えます。
  • (キ)失業者
    失業者は、たとえ失業手当を受け取っている者でも、条件を満たしません。失業手当では3年間の分割弁済は不可能だからです。例外的に、すでに再就職先が正式決定しており、近い将来に反復、継続した収入が見込める場合には条件を満たすと言えます。
  • (ク)主婦
    まったくの専業主婦で自分名義の収入がない場合は、条件を満たしません。ただし、パートなどで一定の収入があり、例えば夫の収入と合わせた家計全体でみれば、分割返済も可能であるという場合は条件を満たすとされる場合もあります。

②債務の総額が5000万円を超えないこと。

この5000万円という金額には、次の債務は含まれません。

  • (ⅰ)債務者の住居が担保となっている住宅ローン
  • (ⅱ)その他の担保権付き債務
  • (ⅲ)罰金など

小規模個人再生の適用が認められるとどうなるか?

債務者は、債務を減額したうえ、原則3年間(特別な事情がある場合は5年間)の分割で払う返済計画を作成して裁判所に提出します。この返済計画案を「再生計画」案と言います。

裁判所は、この計画を認めるかどうかを審査するわけですが、これは債権者らにとって重大な問題ですので、債権者の意見を無視することはできません。

そこで、債権者の過半数(債権者数の過半数かつ債権総額の過半数)が積極的に書面で反対を表明していないことが必要です。

過半数に満たない債権者が異議を唱えても、裁判所は再生計画を認める(認可する)ことができます。

再生計画が裁判所に認可されたら、あとは計画にしたがって、分割払いを実行してゆくことになります。

ゆき
債権者側からすると、たとえ反対をしても、人数か債権額が過半数に足りなければ、裁判所の権限で債権を減額されてしまうわけですね。
しんじ先生
そうです。さらに給与所得者等再生の場合は、過半数が反対であっても裁判所は再生計画を認可できるとされています。
ゆき
ええっ!債権者の意見は全く無視ですか?どうして、そんなことが認められるのですか?
しんじ先生
では、今度は、特別手続である給与所得者等再生について説明しましょう。

給与所得者等再生

個人再生を利用するには、分割払いが可能であること、すなわち将来的に反復、継続した収入を得る見込みがあることが条件のひとつでした。

サラリーマンのような給与所得者は、もちろんこの条件を満たします。

それだけでなく、給与のような定期的な収入で、かつ、その金額の変動幅が小さいときは、より収入が安定しており、分割払いの約束を実行できる確実性が高いと評価できます。

そこで、このような場合は、債権者には意見を述べる機会を与えるだけで、反対意見の有無にかかわらず、裁判所の判断で債務の減額と分割払いを認めることができるとしたのです。これが給与所得者等再生の特徴です。

ゆき
分割弁済の約束を守ってくれる確率が高いのだから、債権者の文句は問わないということですね。
しんじ先生
はい。もっともそれだけでなく、給与所得者等再生の場合は、債権者の意見を問わない代わりに、分割弁済しなくてはならない金額の条件が、小規模個人再生の場合よりも厳しくなっています。これを可処分所得要件と言いますが、これは別の記事で詳しく紹介致します。
ゆき
サラリーマンは必ず給与所得者等再生を利用しなくてはならないのですか?
しんじ先生
いいえ。給与所得者等再生の条件を満たす方は、同時に小規模個人再生の条件も満たしているので、どちらでも選択できます。ご自分の状況に応じて手続きを選ぶことになります。
例えば、債権者が貸金業者の場合は再生計画に異議が出されることはほとんどありませんが、債権者が個人の場合は異議が唱えられることがよくあります。そこで債権者の多くが個人である債務者の場合は、小規模個人再生よりも給与所得者等再生を選択した方が安心です。
債務額の条件 収入の条件 分割弁済の約束 債権者の反対意見の扱い
小規模個人再生 5000万円を超えないこと
(住宅ローンなどを除く)
反復・継続した収入 守れる可能性あり 債権者数及び総債務額の過半数を超える債権者の反対があれば、再生計画は認可されない
給与所得者等再生 定期的収入で変動幅小さい 守れる可能性がより高い 債権者には意見を述べる機会を与えるだけ。過半数の反対があっても再生計画は認可される
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