個人再生では、持ち家を失わないで債務整理ができる制度があると聞きましたが、どのような制度ですか?

ゆき
実は、債務の中に私が購入したマンションのローンがあるのです。自己破産をしてしまうと資産を処分しなくてはならないので、マンションも手放すことになってしまいます。個人再生なら、マンションに住み続けることができると耳にしたのですが、本当でしょうか?
しんじ先生
本当です。それは、住宅資金特別条項制度(住宅ローン特則)を利用した場合です。
ゆき
どのような制度なのですか?
しんじ先生
個人再生は、債務を減額して分割払いをする制度です。もしも、住宅ローンも減額したうえで分割払いとでき、債権者である銀行がこれを我慢しなくてはならないとなったら、どうなるでしょう?
ゆき
それでは債務者は買った値段よりも安い代金しか払わないで、住宅に住み続けることができてしまいますね。
しんじ先生
そうですね。しかし、そんな結論が認められるはずはありません。そもそも、住宅ローンでは、その住宅に銀行の担保権(抵当権)がついています。契約どおりの返済ができなければ、銀行は担保権を実行して住宅を競売にかけてしまいます。
ゆき
住宅ローンは、他の債務と同様に債務を減額しても無意味ということですね。
しんじ先生
そうです。しかし、それでは債務者は生活場所を失ってしまい、立ち直りが難しくなってしまいます。
そこで、住宅ローンだけは、他の債務とは切り離して、特別扱いをしても良いという制度を作ったのです。
これが、住宅資金特別条項制度(住宅ローン特則)です。この制度は、小規模個人再生、給与所得者等再生のいずれでも利用できます。

住宅資金特別条項制度の内容

住宅資金特別条項制度の内容

個人再生は、債権者間に不平等を生じさせることは禁じられます。このため、債務者は、一部の債権者だけを特別扱いして、その者だけに有利な返済をすることは認められません。債権者は、債権額に応じて、同じ割合で債権の減額と分割弁済を受けるのです。

しかし、住宅ローンまでこの中に含めると、銀行が担保権を実行してしまうため、債務者は住宅を失ってしまいます。

そこで、住宅ローンだけは、特別扱いとし、減額した分割払いの対象から外して、当初の契約どおりの毎月の支払いを続けていて構わないとしたのです。これなら、住宅が競売にかけられる心配はありません。

ゆき
マンションを失わないのはうれしいですが、住宅ローンを銀行との契約どおりに支払ってゆくとなると、個人再生で裁判所に認められた他の債権者に対する分割払いと住宅ローンの両方を支払ってゆくことになりますね。なかなか大変かもしれません。
しんじ先生
それはそうです。しかし、住宅ローンはそのままであっても、それ以外の債務は減額されますから、個人再生前と比べれば支払額を減らすことができます。
しかも、他の債務の分割弁済は原則3年で終了しますから、その後は住宅ローンの支払いだけになるので、だいぶ楽になるはずです。
ゆき
そうですが、大丈夫かどうか自信がありません。
しんじ先生
住宅ローン特則を利用した場合、銀行側との協議によって色々な対応策が可能です。
  • ①銀行との当初の契約どおりに住宅ローンを返済してゆくケース
  • ②支払期間を延長してもらうケース(リスケジュール)
  • ③滞納して発生してしまった一括払いの義務をもとの分割払いに戻してもらうケース
  • ④支払期間を延長してもらい、再生計画による3年間の(他の債務への)分割弁済期間は住宅ローンの毎月の返済金を一部だけ猶予してもらうケース
ゆき
実はすでに住宅ローンの滞納が何ヶ月にもなるのですが……。
しんじ先生
それは急いだ方が良いですね。住宅ローンを滞納したために、保証会社が銀行に弁済してしまった場合は、本来なら住宅ローン特則の利用対象とならないのですが、弁済から6ヶ月以内に個人再生の申立をした場合に限り、住宅ローン特則の利用が認められています。まだ間に合うかも知れません。

住宅資金特別条項制度の利用

債務の取り扱い 効 果
住宅ローン 減額せず返済を継続(協議により返済期間などの返済条件を変更することなども可能) ローン完済まで支払い継続。住宅は失わない。
その他の債務 減額して分割払い 3年間で支払い終了

住宅資金特別条項制度における銀行との事前協議の重要性

住宅資金特別条項制度における銀行との事前協議の重要性

上の会話で指摘されているように、住宅ローン特則を使った場合、その他の債務の分割払いと同時に住宅ローンの支払いがそのまま残るため、条件によってはかなりの負担が生じる場合があります。このため、再生計画が実現可能かどうかが、より厳しく判断されることになります。

そこで、住宅ローン特則を利用するにあたっては、特別に次の取り扱いがなされています。

  • ・住宅ローン特則を利用する再生計画は、それが実現可能な計画であると積極的に認めてもらえないと認可されません(通常の場合は、実現不可能と見込まれなければ認可されます)。いわば、裁判所が太鼓判を押してくれる必要があります。
  • ・住宅ローン特則を利用したい債務者は、あらかじめ債権者である銀行側と協議することが要求されています。実現可能な計画案を銀行側と一緒に練ってから裁判所に来いというわけです。
  • ・そして実際に住宅ローン特則付きの再生計画案が提出されたならば、裁判官が銀行側の意見を聴取することとなっています。銀行側が難色を示せば、裁判官に実行不可能な再生計画と判断される危険があります。

このように住宅ローン特則の利用には、銀行側との事前の協議を十分に行って、再生計画の内容を吟味しておくことが非常に大切となります。

みんなの借金減額ガイド