



任意整理とは、債権者との話し合い
任意整理とは、債権者との話合いで債務を整理する方法です。
例えば、Aさんが友人Bさんから12万円を借りたとしましょう。毎月2万円ずつ、給料日に6ヶ月わたって返済すると約束し、この条件を記載した契約書も作って、二人とも署名、押印しました。
ところが3回分6万円を返済したところで、Aさんの妻が入院することになってしまい、返済がきつくなってしまいました。そこで、Bさんと話し合って、残債務6万円を毎月5000円の12回払いとすることで合意しました。この条件で契約書を作り直して、改めて二人とも署名、押印をしました。
これが、ごく単純な任意整理の形です。債権者と債務者が話し合って、お金を借りた当初の契約で決められた債務の金額や返済の条件を見直し、あらためて合意をしなおして、その内容の新たな契約書(合意書)を作成するのです。
「任意」整理と呼ばれるのは、自己破産や個人再生のように裁判所の手続によって強制的に内容が決まるものではなく、あくまでも当事者の納得、合意に基づく整理方法だからです。
任意整理は債務者本人でもできる?
このように任意整理は、あくまで債権者との交渉ですので、債務者本人だけで行うこともできます。また、債務者本人の家族、親族、友人、知人などでも、債務者の代理人として交渉を行うことも禁止されているわけではありません。
しかし、債務者本人だけで任意整理を行うことはおすすめできません。また、債務者の家族、親戚、友人、知人などに代理人となってもらうことも同様におすすめできないことです。その理由の代表的なものは次のとおりです。
- ・交渉相手は貸金業者であり、債権取り立ての専門業者(プロ)であること
- ・ほとんどの場合、一人の債務者に複数の債権者がいるので、同時に多数の債権者との交渉を進めなくてはならない
- ・利息制限法に則った正しい金利計算(引き直し計算)を始めとする金融に関する法的な知識が不可欠である
- ・債務者本人やその家族等の一般人に対しては、債権者側は強気の対応を崩さない
- ・債務者本人以外の一般人が代理人となっても、そもそも債権者は交渉に応じない


任意整理を成功させるためには、専門家である弁護士や司法書士に依頼することがベストなのです。
任意整理の具体的な内容とは?


取り立てをストップさせる
任意整理を依頼されたら、弁護士・司法書士は受任通知を債権者に送付します。これにより、貸金業者は債務者への取り立てが禁止されます。
3年から5年の分割払い
債務整理が必要な方のほとんどは、まとまった金額の支払いは困難ですので、数年にわたる分割弁済の合意を目指します。多くのケースでは、3年払いから5年払いで合意がまとまります。
ほとんどの方が、これまでの契約に従った毎月の返済に無理が生じており、延滞が発生して債権者から一括払いを請求されるなどして、とても悩んでいるはずです。
長期の分割払いとすることで、これまでよりも返済が楽になり、無理のない生活設計ができるようになります。
将来利息のカット
分割払いの前提として、支払わなくてはならない総額(支払総額)を決めます。多くの場合は、このときに「将来利息」をカットする合意を行います。
将来利息とは、今後発生するはずの利息金です。最終的に分割弁済が終わるまでは、毎月の利息がかかることが本来の形ですが、これをカットさせることには、次の大きな意味があります。
- ①最終的な支払総額を抑えることができます。
- ②毎月の分割返済金に加えて利息がかかると、月々の返済額が細かく変動することになり計算が煩雑です。
- ③債務者にとっては、あと幾ら返したら完済となるのかが単純、明快な方が、毎月頑張るモチベーションが上がるのです。これは結構重要な点です。
任意整理においては、将来利息しかカットしないというわけではありません。任意整理の内容は自由ですから、すでに生じて延滞となっている利息金や元金部分の一部カットを要求する場合はありますし、債務内容や条件によっては債権者の同意を得られる場合もあります。
引き直し計算を行って金額を決める
任意整理においては、引き直し計算を行うことが前提です。貸金業者が利息制限法が定めた利率よりも高率の利息をとっている場合は、正しい金利で計算し直すのです。
そのための資料である取引履歴は、弁護士等が貸金業者に開示請求をして入手します。
引き直し計算をすると、債務者が支払ってきた金額の利息分の中に、本来払う必要がなかった「支払いすぎた利息金」があることがわかります。これを超過利息といいます。
超過利息は、本来支払う必要がないお金だったので、これを支払った時点で、元金の返済に充てたものと取り扱います。これにより、任意整理の時点では、貸金業者が主張する契約上の金額よりも実際の債務額は少ないことが明らかになります。
任意整理では、この正しい金額を前提として支払い総額を交渉しますので、超過利息を支払っていた場合には、元金と未払いの利息金を減額する効果があることになります。
過払い金返還請求も行う
任意整理は、分割弁済の交渉を行うだけではありません。引き直し計算をしたことで、債務者が過払い金返還請求権を有していることが判明することは多々あります。
例えば、債権者がA社、B社、C社の3社ある場合、A社とB社には50万円ずつ合計100万円の債務が残っているが、C社に対しては200万円の過払い金返還請求権があるという場合があります。
長期にわたってC社に超過利息を返済し続けてきて、ここ最近になってC社への返済資金に困ったためにA社、B社からも借り入れをしたというようなケースでは、このような例が珍しくありません。
このようなケースでは、任意整理を担当する弁護士らは、C社から過払い金200万円を回収し、これをA社、B社への返済資金とするのです。
A社、B社には、分割払いではなく、一括してまとまった金額の返済が可能なので、これを交渉材料として、元金や未払利息金の一部カットを実現できる可能性も高くなります。残った100万円超の金額は債務者本人のものとなります。
合意書を作成する
任意整理で、債権者と合意できたなら、各債権者と個別に合意書を作成し、調印した書類を交換します。
合意書は、和解契約書などとも呼ばれますが、要は、合意できた内容を書面にして、後日の証拠として残すものです。
貸金業者によっては所定の書式を利用する場合もありますし、弁護士・司法書士が作成する場合もあります。貸金業者側の書式を利用する場合は、もちろんその内容を弁護士らが綿密にチェックし、合意していない内容や債務者に不利な内容がないかどうかを確認し、間違いがなければ、代理人として弁護士らが記名、押印します。
弁護士、司法書士が支払いをまとめて代行も可能
合意後に分割弁済をする相手方債権者が多数にのぼる場合は、債務者本人が毎月それぞれの債権者に返済をしてゆくことは、かなりの手間がかかる作業となってしまいます。
その様なケースでは、弁護士、司法書士に分割弁済の代行を依頼することも可能です。
債務者は、月々の分割弁済金の総額を弁護士らの預り金口座に振込むだけで良いので、大幅に負担を軽くすることができます。
これを利用すると、振込みがなければ、弁護士らが注意してくれますから、いわば弁護士らがお目付役となってくれており、支払い忘れや延滞を防止できるという効果もあります。


任意整理の内容 まとめ
取り立ては? | 弁護士等が受任を通知し、取立てはストップ |
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誰が交渉? | 弁護士等が貸金業者と交渉 |
支払総額は? | 引き直し計算で正しい金額を算出して減額 将来利息をカットして減額 条件により延滞利息、元金の減額が実現することも |
過払い金は? | 過払い金が判明すれば、回収して他の債務の返済資金等に充てる |
支払方法は? | 3年から5年の分割払いが多い |
合意方法は? | 債権者との合意書(和解合意書)を作成して証拠とする |
送金方法は? | 弁護士等に代行依頼が可能 |