過払い金返還請求には、どんなメリット、デメリットがありますか?

ゆき
任意整理や自己破産などの債務整理には、メリットもあればデメリットもありました。同じように、過払い金返還請求権にもメリットだけでなくデメリットもありますか?
しんじ先生
確かに、どのような法的手段にも、良い面と悪い面があるのが一般です。しかし、過払い金返還請求権は、払いすぎたお金を返してもらうだけの話ですので、メリットこそあれ、これを行使することによるデメリットというのはほとんどありません。
ただ、過払い金返還請求権を行使するかどうか決める際に、そのメリットを知っておくと同時に、過払い金返還請求権の注意点もよく知っておくべきです。

そこで、以下では、「過払い金返還請求権で注意するべき点」を、あえて「デメリット」という言い方で整理してご説明します。

まずは、メリットから整理しましょう。

過払い金請求のメリット

過払い金請求のメリット

①過払い金は現金で受け取ることができる

過払い金返還請求権の最も大きなメリットは、貸金業者から過払い金を現金で返還される点です。

これまで貸金業者との約定どおりに支払ってきた超過利息が、いわば、知らないうちに「貯金」となっており、その払い戻しを受けられるというイメージです。

②過払い金は利息付きで受け取ることができる

過払い金には、利息(遅延損害金)も加算して支払われます。

過払い金は、貸金業者が受領する権利のないお金であり、法的には「不当利得」に該当します。

不当利得とは、ある者の損失において他の者が法律上原因のない利得をした場合それを返還しなければならないという法制度です。

不当利得などと言うと難しい印象を受けますが、要するに、間違えて釣り銭を多く貰い過ぎたなら返さなくてはならないという当たり前の話です。

そして、不当利得では、利得をしたものが「悪意の受益者」である場合には、返還の際に利息(遅延損害金)を加えて支払わなくてはならないと定められています。

「悪意の受益者」とは、自分が得た利得が法律上原因がないものであり、返還しなければならないことを知っていた者のことです。

貸金業者は金融のプロですから、特別の事情がない限り、利息制限法違反の利息が違法で返還しなければならない金銭と知りながら受け取っているので、悪意の受益者にあたるのです。

この利息(遅延損害金)の利率は、民法に定められた民事法定利率に従い年5%です。

現在(2019年5月時点)で、普通預金の金利は0.001%程度ですから、年5%の利息は非常に高い利率です。

過払い金返還請求権の権利を行使することは、非常にメリットが高いことが理解していただけると思います。

③返金された過払い金には所得税はかからない

返還された過払い金には所得税はかかりません。払いすぎていたお金の返還は、本来の財産が戻ってくるだけで、所得に当たらないからです。

ただし、過払い金に対する課税については、次の2点に注意が必要です。

第1に、過払い金には通常年5%の利息遅延損害金が加算されて支払われますので、この利息部分は雑所得として所得税の課税対象になります。

第2に、超過利息を支払っていた年度に、その利息金を事業の経費として計上して所得を申告していた場合です。過払い金の返金を受けたことによって、計上していた経費が戻ってきたわけですから、経費として申告していた年度の申告は修正しなくてはなりません。

④債務を返済中でも、借金がゼロとなったり、減額されたりする

任意整理、自己破産、個人再生、特定調停といった債務整理の前提として、引き直し計算で正しい債務額を計算し、過払い金返還請求権の存否を確認します。

貸金業者との約定に従って返済をしている途中の債務者であっても、引き直し計算によって、すでに債務を完済していたことが判明した場合は、債務整理をする必要がなくなります。そして、計算上完済となった以降の支払いは、全て過払い金となり、その返還を求めることができます。

計算上、債務の完済には至っていない債務者でも、引き直し計算により、月々の超過利息(すなわち毎月の過払い金)が元金の返済に充てられてゆく結果、貸金業者との約定に従った金額よりも、ずっと少ない債務額しか残っていないことが判明します。借金の大幅な減額が可能となるのです。

⑤ブラックリストにはのらない

過払い金返還請求権を行使してもブラックリストに載ることはありません。

ブラックリストとは、いわゆる信用情報機関の事故情報の登録です。任意整理、個人再生、自己破産、支払い延滞などの情報が登録されます。

銀行、カード会社、信販会社、貸金業者は、顧客と新規に融資契約等をする場合、信用情報機関にその顧客の情報を照会し、きちんと返済をできる顧客かどうか、その信用力を判断します。

事故情報が登録されていれば、信用のない客と判断され、新規の融資を受けたり、カードを発行してもらったり、分割払いで商品を購入したりすることは事実上不可能となります。この事故情報は、通常5年から7年の間、登録が継続します。

信用情報機関が登録できる情報は、顧客の返済能力に関する事項だけとされています。

他方、過払い金返還請求権を行使するケースでは、すでにその貸金業者に対する債務は完済されていますし、支払い過ぎたお金を返してもらうことは、その人の返済能力に関わる問題ではありません。

従って、過払い金返還請求権を行使しても、その事実が信用情報に登録されることはないのです。

もっとも、貸金業者との約定に従って返済をしている途中の方が債務整理を行い、引き直し計算をした結果、既に債務が完済されており、逆に過払い金が発生していたことが判明したという場合には注意が必要です。当初の債務整理の通知を送った段階で、それが登録されてしまっている場合があるからです。

この場合、登録された情報は、引き直し計算で債務の完済が判明した段階で末梢されるべきものですが、きちんと登録を抹消してくれる貸金業者ばかりではなく、抹消しない貸金業者や、抹消することを失念してしまう貸金業者も存在します。

従って、引き直し計算で債務がゼロとなった場合でも、誤った事故情報が登録、放置されていないかどうか確認するため、ご自分の信用情報の開示を信用情報機関に求めましょう。

もしも事故情報が登録されていた場合には、その抹消を貸金業者へ請求しなければなりません。

⑥保証人への影響はありません

債務を完済しているケースでは、当然ですが保証人の責任も消滅しています。したがって、貸金業者へ過払い金の返還を請求しても、保証人には何の影響もなく、何も迷惑をかけることはありません。

貸金業者との約定にしたがって返済している途中のケースでも、引き直し計算ですでに完済されていることが判明したときは、やはり保証人の責任もなくなっていますから、過払い金返還請求の行使は保証人に全く影響がありません。

なお、返済途中のケースで、引直し計算をした結果、債務が残った場合でも、債務額は減少していますから、当然に保証人の責任も減少しています。

⑦過払い金返還請求は、相手を選べる

債務整理方法のうち、自己破産と個人再生は、複数の債権者のうちの一部だけを選んで整理の対象とするという方法はとれません。

これらは裁判所による強制的な整理方法で、全債権者の利益と平等が重視されるので、全ての債権者の存在を裁判所に届け出て、手続の対象としてもらう必要があります。

これを怠れば、免責が認められなかったり、再生計画が認可されなくなったりする危険があります。

他方、過払い金返還請求は、払いすぎた金銭の返還を求めるだけですので、これを行使するかどうか、どの貸金業者に対して行使するか、すべて本人の自由です。

⑧過払い金返還請求をしても資格制限はない

自己破産では、破産手続の開始決定を受けてから免責されるまでは、一定の職業につく資格を制限されます。

例えば、会社の取締役、弁護士、税理士、宅地建物取引士、生命保険外交員、警備員、パチンコ店店長などです。

他方、過払い金請求権は権利の行使ですから、資格制限を受けることはありません。

⑨過払い金返還請求に借金の理由は無関係

借金をした原因がギャンブルや浪費のときは、自己破産では免責不許可事由として免責を受けられなくなる場合があります。

個人再生でも、ギャンブル癖、浪費癖が改善されていないときには、再生計画の分割払いを実行できない可能性があるとして、個人再生が認められない場合もあります。

これに対し、過払い金返還請求は権利を行使するものですから、もともとの借金が発生した原因を問われることはありません。

⑩過払い金返還請求をしても官報への掲載はない

自己破産や個人再生の手続きを行えば、それが官報に掲載されることになっています。

自己破産や個人再生は、裁判所の判断によって強制的に債権者の権利を失わせたり、権利を制限したりする手続きなので、債権者に対し、自己の債権の届出をしたり、手続きに対する異議を申し立てたりする機会を与えなければならないからです。

しかし、過払い金返還請求には、そのような事情はありませんから、返還を求める訴訟を提起しても官報に掲載されることはないのです。

過払い金返還請求のデメリット

過払い金返還請求のデメリット

次に、過払い金返還請求のデメリットもまとめて説明します。ただし、先に述べましたように、デメリットというよりは、過払い金返還請求権において注意すべき点という意味で解説いたします。

①過払い金返還請求は10年で時効消滅する

過払い金返還請求権には、10年の消滅時効が適用されます。

消滅時効とは、法律上権利を行使することができる時点から、権利を行使しないまま一定期間が経過すると権利が消滅してしまうという制度です。

権利があるのに、これを行使しない者は「権利の上に眠れる者」として法的保護に値しないと判断されるためです。

法律上権利を行使することができる時点とは、貸金業者との取引終了日とされており、通常、最後に金銭を借り入れをした日か、最後に返済をした日がこれに該当します。

もっとも、この10年の時効期間については、ここでは解説仕切れない、多くの専門的な法律問題があります。

ですので、ご自分の権利が消滅しているかどうかについて、「10年経っているから、もうダメだ」、「来年までは、まだ大丈夫だ」などと素人判断をすることは避けるべきです。必ず弁護士や司法書士に相談して判断してもらいましょう。

②過払い金の有無は、引き直し計算しないと判断できない

過払い金が発生しているかどうかは、取引の履歴から引き直し計算をしなければ判明しません。

すでに完済している場合は、利息制限法違反の利息を支払っていた事実がある限り、過払い金があることになりますが、正確な数字を算出するには、実際に計算を行う必要があります。

特に、貸金業者との約定にしたがって返済をしている途中の方は、計算上、完済となっているかどうかによって、返還請求できるかどうかが左右されますので、詳細を調べない限り判断はつかないのです。

③返済途中の場合、ブラックリスト登録の危険

債務整理を開始した後に、計算上は完済して過払い金が発生していたことが判明したケースでは、債務整理を行ったことが信用情報に登録されて、そのままにされてしまう危険があります。

法的に債務は消滅していたのであり、本来、抹消されるべき登録ですから、情報を確認して是正させる必要があります。

④弁護士や司法書士の費用が必要

過払い金の有無を調査し、その返還を求める手続をご本人自身の手で行うことは自由です。

しかし、法的な知識のない方が、プロの貸金業者を相手に返還の交渉を行ったり、訴訟を起こしたりすることは、実際上は困難と言わざるを得ません。

従って費用をかけて、弁護士、司法書士といった法律の専門家に依頼をする必要があります。

ゆき
払いすぎたお金を返してもらうだけと言っても、単純な話ではないということですか?
しんじ先生
ここまで話してきた内容は、一般の方の理解を容易にするため、過払い金返還請求権の内容を単純化して大枠を説明したものに過ぎません。
実際の過払い金返還請求権をめぐる法律問題は、専門家でも、時間をかけて熱心に研究をしなければ容易に理解できない高度に専門的な論点、裁判例が多数存在しているのです。しかも、過払い金を返したくない貸金業者は全力で抵抗し、反論してきます。一般の方が渡り合うのは至難の業で、お勧めできません。
ゆき
生兵法は大火傷のもとですね。
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