ブラックリスト(信用情報)について正確な知識を持とう!

ゆき
債務整理をするとブラックリストにのってしまい、大きな不利益を受けると聞きますが、本当でしょうか?
しんじ先生
そのとおりです。確かに不利益は受けます。
ゆき
ブラックリストとは一体どういうものなのでしょうか?また、具体的にどのような不利益を受けるのでしょう?
しんじ先生
皆さん、ブラックリストが怖いとおっしゃいますが、正確に理解されている方は少ないです。ここで、ブラックリストの正体について説明しましょう。

「ブラックリスト」とは、「信用情報」における「事故情報」のことです。

信用情報とは何か

自己破産の場合

「信用情報」とは、これからお金を借りようとする人、既にお金を借りている人(債務者)の返済能力に関する情報です(貸金業法第2条第13項)。

金融機関は、融資にあたって、借入れ希望者に返済をする能力があるかどうかを審査します。これは、回収できない危険性の高い融資を断って、金融機関の損失を防止するためです。

しかも、返済能力の有無を適正に吟味して、無理な融資を抑制することは、返済能力を超えた過剰な融資による多重債務者の発生を防止することにも役立ちます。

この観点から、貸金業法は「指定信用情報機関制度」を定めています。

この制度は、信用情報を取り扱う団体のうち一定の要件を満たすものを、内閣総理大臣が指定信用情報機関と定め、貸金業者が融資等の審査をする際には、指定信用情報機関が管理する信用情報を利用することを義務づけるものです(貸金業法第13条)。

貸金業者が指定信用情報機関の信用情報を利用するには、指定信用情報機関と契約して、加盟する必要があります。

そして、貸金業者が個人に融資をしたときは、その情報を自己の加盟する指定信用情報機関側に伝えなくてはなりません。貸金業者が把握した信用情報に変更があった場合にも、遅滞なく変更を指定信用情報機関に伝えなくてはならないのです。

ゆき
つまり、国が指定する情報機関に個人の返済能力についての情報を集めさせて、お金を貸す時には、その情報をもとに貸すかどうかを判断するよう、貸金業者に強制しているのですね。
しんじ先生
そうです。これは平成22(2010)年に貸金業法が改正され、個人が借入れできる合計額は、原則として年収等の3分の1までという『総量規制』制度が導入されたことがきっかけとなりました。
ゆき
規制する以上、貸す側も借主の負債残高がわかるようにしなくてはならなくなったのですね。

3つの信用情報機関

3つの信用情報機関

しんじ先生
具体的にどんな信用情報機関があるのかを紹介しましょう。

我が国には、次の3つの信用情報機関があります。

  • ①株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • ②株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • ③全国銀行個人信用情報センター

順番に解説してゆきましょう。

①株式会社日本信用情報機構(JICC)

JICCは指定信用情報機関のひとつです。加盟している業者は、消費者金融(サラ金)、信販会社を中心に、2019(令和元)年5月15日時点で880社となっています。

②株式会社シー・アイ・シー(CIC)

CICも指定信用情報機関のひとつです。加盟している業者は、クレジットカード会社、信販会社を中心に、2019(平成31)年4月20日時点で912社となっています。

③全国銀行個人信用情報センター

全国銀行個人信用情報センターは、指定信用情報機関ではありません。これは、全国銀行協会(JBA)という銀行の業界団体が運営している機関です。加盟している業者は、銀行を中心に、銀行系クレジット会社などで、2018(平成30)年3月末時点で1174社となっています。

これら信用情報機関は提携し、相互に情報の交流を実施しています。

JICC、CIC、全国銀行個人信用情報センターの3機関ともに参加している交流が「CRIN」(Credit・Information・Network)です。

指定信用情報機関であるJICC、CICの2機関だけが参加している交流が「FINE」(Financial・Information・Network)です。

貸金業者が借主の総債務額を把握できるように、指定信用情報機関は、他の指定信用情報機関から信用情報の提供を依頼されたときは、これに応じなくてはならないとされています(貸金業法第41条の24)。

登録される情報とは

登録される情報とは

ゆき
実際にどのような情報が登録されるのですか?
しんじ先生
その点を次に見てゆきましょう。

指定信用情報機関が登録する「信用情報」とは、「返済能力に関する情報」とされており(貸金業法第2条13項)、登録しなくてはならない内容は個人信用情報として法令で定められています(同14項、41条の35、貸金業法施行規則30条の13)。主なものは次のとおりです。

  • ・氏名(ふりがな付き)
  • ・住所
  • ・生年月日
  • ・電話番号
  • ・勤務先の商号、名称
  • ・運転免許証等の番号
  • ・健康保険証等の番号
  • ・契約年月日
  • ・貸付の金額
  • ・貸付の残高
  • ・延滞の有無
しんじ先生
これらは、法令で登録が義務づけられている事項ですが、もちろん登録される情報はこれに限られるわけではなく、返済能力に関する情報は登録されています。例えば、月々の返済状況などです。
ゆき
延滞の有無も登録されてしまうのですね。
しんじ先生
そうです。貸金業者との約定どおりに返済できなかった事実が『事故情報』であり、これがブラックリストの正体というわけです。
ゆき
そうすると、とりあえず約束違反がなければ、債務整理を開始しても、信用情報にはのらないのですか?
しんじ先生
いいえ、違います。信用情報には、延滞の事実だけでなく、返済能力に関する情報であれば登録されますから、債務整理をしたことも登録されるのです。

それでは、ここで債務整理と信用情報の登録について、各信用情報機関ごとに整理して説明します(2019年5月時点)。

①株式会社日本信用情報機構(JICC)と債務整理

  • ・任意整理
    債権者に減額などを申し入れたことが、「債務整理」として登録されます。登録期間は申し入れたときから5年を超えない期間です。
  • ・特定調停
    特定調停を申し立てたことが「特定調停」として登録されます。登録期間は申し立てから5年を超えない期間です。
  • ・自己破産
    破産手続の申立てをしたことが「破産申立」として登録されます。登録期間は申し立てから5年を超えない期間です。
  • ・個人再生
    個人再生の申立をしたことが「民事再生」として登録されます。登録期間は申し立てから5年を超えない期間です。
  • ・過払い金返還請求
    過払金返還請求権の行使は返済能力に関する情報ではないので登録事項ではありません。

②株式会社シー・アイ・シー(CIC)と債務整理

  • ・任意整理
    任意整理を開始したこと自体は登録事項ではありませんが、任意整理の結果である、支払条件や支払総額が変更になったことは登録されます。登録期間は、契約期間中および契約終了後5年以内です。
  • ・特定調停
    特定調停を申し立てたこと自体は登録事項ではありませんが、特定調停の結果である、支払条件や支払総額が変更になったことは登録されます。登録期間は、契約期間中および契約終了後5年以内です。
  • ・自己破産
    破産手続の申立てをしたこと、裁判所が破産手続の開始決定をしたこと、免責されたことがいずれも登録されます。登録期間は、契約期間中および契約終了(免責決定)後5年以内です。
  • ・個人再生
    個人再生の申立をしたこと自体は登録事項ではありませんが、個人再生で再生計画が認可された結果である、支払条件と支払総額が変更になったことは登録されます。登録期間は、契約期間中および契約終了後5年以内です。
  • ・過払い金返還請求
    過払金返還請求権の行使は返済能力に関する情報ではないので登録事項ではありません。

③全国銀行個人信用情報センターと債務整理

  • ・任意整理
    任意整理を開始したこと自体は登録事項ではありませんが、任意整理の結果として、金融機関との約定どおりの支払いがなされなかったことは登録されます。登録期間は、契約期間中および契約終了後5年以内です。
  • ・特定調停
    特定調停を申し立てたこと自体は登録事項ではありませんが、特定調停の結果として、金融機関との約定どおりの支払いがなされなかったことは登録されます。登録期間は、契約期間中および契約終了後5年以内です。
  • ・自己破産
    裁判所が破産手続の開始を決定したことは官報に掲載されますが、全国銀行個人信用情報センターでは、その官報の掲載内容を登録します。登録期間は、破産手続の開始決定から10年以内です。
  • ・個人再生
    裁判所が個人再生手続の開始を決定したことは官報に掲載されますが、全国銀行個人信用情報センターでは、その官報の掲載内容を登録します。登録期間は、個人再生手続の開始決定から10年以内です。
  • ・過払い金返還請求
    過払金返還請求権の行使は返済能力に関する情報ではないので登録事項ではありません。
ゆき
どの信用情報機関も、過払い金返還請求は返済能力に関する情報ではないから登録事項ではないとされていますが、私の周りには、過払い金を請求するとブラックリストに載ってしまうという意見が強いのですが……
しんじ先生
それは誤解です。ただ、過払い金返還請求とブラックリストの関係は、少々説明が必要ですね。

過払い金返還請求と信用情報

過払い金返還請求と信用情報

確かにかつては過払い金返還請求権を行使するとその旨をわざと信用情報に報告する貸金業者も存在し、これを情報として記載する信用情報機関もありました。

しかし、過払い金が発生しているということは、超過利息を支払い続けた結果、既に法律上は債務は完済されて、支払いすぎたお金の返金を要求する権利だけが残っているという状態です。

従って、過払い金返還請求権を行使した事実は、その人の返済能力に関係する情報ではありません。

ですから、信用情報に過払い金返還請求権行使の事実を登録することは、不適切な行為としか言いようがありません。

このことは貸金業者、信用情報機関を監督する金融庁も認めるところであり、金融庁が指定信用情報機関を監督する際のガイドラインでは、信用情報は、それが「返済能力に関係する情報」であると「客観的かつ合理的に説明可能な情報でなければならない」旨を定めています(事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係13、指定信用情報機関関係Ⅰ-3-2-3)。
過払い金返還請求権を行使したことを信用情報に登録することは、このガイドラインに反することです。

このように、現在では、過払い金返還請求を行使しても、信用情報に登録されることはないのです。

ブラックリストによって被る不利益

ブラックリストによって被る不利益

ゆき
ブラックリスト、つまり信用情報機関に事故情報が登録された場合、どのような不利益を受けるのですか?
しんじ先生
今後一定期間は、借金を申し込んでも断られるという不利益です。

金融機関は信用情報に登録された内容を見て融資をするかどうか判断します。
どのように考えるかは、金融機関の個別判断ですが、債務整理をした者については返済能力に問題があったことが明らかですから、融資をしてくれることは事実上期待できません。

このため、次のような不利益を受けることになります。

  • ・住宅ローンや自動車ローン等を組むことはできない
  • ・クレジットカードの発行を受けることができない
  • ・クレジットカードでキャッシングをしたり、クレジット払いで買物をしたりできない
  • ・スマートフォンを分割払いで購入することができない
  • ・クレジットカードでの支払いが条件となっている通信会社と契約することができない
ゆき
うーん。ずいぶん不便なのですね。やはり債務整理は避けるべきなのでしょうか?
しんじ先生
不便はたしかです。しかし、考え方次第です。債務整理をお考えの方は、借金の返済が苦しくなっている方、すでに返済ができない状態となっている方です。そのような方が、今後の新たな借り入れを考える必要が本当にあるのでしょうか?
ゆき
もう返せないのだから、まず精算することを先に考えるべきだということですか?
しんじ先生
そのような状態では仮に、どこかから新たに借り入れができても焼け石に水です。すぐに行き詰まることは火を見るよりも明らかです。延滞すれば、債務整理をしなくとも事故情報となるのですから、結局、同じことなのです。
ゆき
債務整理をしてもしなくても、不利益は同じだということですね。
しんじ先生
そうです。債務整理でブラックリストにのる不利益が、本当に不利益といえるものかどうか、次の観点から考えてみてください。
  • ・債務整理をするとブラックリストにのる。他方、債務整理をしなくても延滞によってブラックリストにのる。
  • ・債務整理をすると債務を処理できるので、一定期間後はブラックリストの登録は抹消され、新たな借り入れ等ができるようになる。

他方、債務整理をしないと債務は残ったままとなるので、返済に苦しみ続けるにもかかわらず、ブラックリストの記録もずっと残り、新たな借り入れはできないままとなる。

しんじ先生
どちらが賢い選択か、誰にでもわかることではないでしょうか?
ゆき
なるほど。債務整理をした方が、明らかにメリットが大きいことがよくわかりました。

自分の登録情報を確認しよう

自分の登録情報を確認しよう

ゆき
もしも信用情報機関に間違った事故情報が登録されてしまったら、自分は悪くないのに、新たな借り入れができなくなってしまいますね。
しんじ先生
そうです。信用情報はその人にとり、とても重要な情報と言えます。
ゆき
間違っていないかどうかを確認する方法はないのですか?
しんじ先生
もちろんあります。是非、ご自分の情報を確認されることをお勧めします。

信用情報機関に誤って事故情報が登録され、融資の審査が通らないといった事態がないわけではありません。

信用情報は、貸金業者など金融機関側から登録される情報で、登録時点では債務者側は知ることができず、信用情報機関側も登録内容の真偽を確認する手段がないので、悪意がなくとも手違いで間違った情報が登録されてしまう場合はあるのです。

また、過去には過払い金返還請求権を行使したことが(本来、借主の返済能力にかかわる問題ではないので、登録できる信用情報に含まれないにもかかわらず)、事実上、登録され、新たな融資を受けられなくなるという不当な事態も生じていました。

しかし、現在では各信用情報機関とも、債務者本人からの申請によって登録されている内容を開示する制度を整備しています。

信用情報は個人の重大なプライバシーですので、開示申請の手続にあたり、厳格な本人確認手続が要求されていますが、株式会社日本信用情報機構(JICC)と株式会社シー・アイ・シー(CIC)では、①各機関の窓口での申請、②書類の郵送による申請、③パソコン、スマートフォンによる申請が可能となっています。全国銀行個人信用情報センターは書類の郵送による申請だけです。

いずれも登録情報は書類の郵送で開示されます。

もしも間違った情報が登録されている場合は、原則として、その登録をした金融機関に問い合わせたうえで登録内容の訂正を要求します。登録をするのは、各信用情報機関に加盟している金融機関であって信用情報機関ではないからです。

ただし、金融機関との交渉で解決しない場合は、信用情報機関に調査の実施を依頼することが可能であり、調査の結果、誤りが判明すれば、金融機関側が訂正を行います。