

弁護士、司法書士にも得意不得意がある
弁護士や司法書士は法律の専門家として国からその資格を認められて仕事をしており、一般の方よりも法律や手続の知識があります。
しかし、法律の分野は膨大で、優秀な弁護士、司法書士でも、すべての分野に精通することは不可能です。
医師に外科、内科、耳鼻科などの専門分野があり、同じ外科医師でも循環器、消化器、など細かく分野があるように、法律家も得意な分野が当然にあります。
債務整理を得意とし、その経験が豊富で、研究熱心な弁護士や司法書士がいます。
その債務整理の中でも、企業の民事再生や会社更生を得意とする者もいれば、個人の自己破産、個人再生、任意整理を得意としている者もいます。
得意分野は熱心に研究、勉強をして、多くの事件から豊富な経験を積んでいますが、それ以外の分野は勉強時間もあまりとれず、経験も少なくなってしまうのは当たり前です。
どのような分野でもこなせるスーパーマンのような法律家は実際には存在しません。
債務整理を希望している方が、債務整理より交通事故や離婚を得意とする弁護士や、債務整理よりも刑事事件を得意とする弁護士に依頼をするのは考えものです。
友人知人から、とても人柄がよく誠実な弁護士さんだからと紹介されて、債務整理を依頼してみようかと考える場合もあるでしょうが、人柄が良く誠実なことと、債務整理に関する知識と経験が十分かどうかは別の問題です。
債務整理を確実、スピーディーに行うには、やはり債務整理を得意とする弁護士、司法書士に依頼するべきなのです。
誠実な事務所の見極め方
いくら経験が豊富でも、誠実に仕事をしてくれない法律事務所、司法書士事務所では債務整理は成功しません。
任意整理を依頼し、何ヶ月も経っているのに、債権者との交渉がどの程度進んでいるのか全く報告してくれない。
自己破産を依頼したのに、一度事務所で事情を聞かれただけで、申立をしてくれたのかどうかも全くわからず、事務所に電話をしても、いつも先生は不在で捕まえることができない。
こんなことでは、とても信頼して債務整理を任せることはできません。
弁護士、司法書士である以上、依頼者の利益を守るために、出来る限り迅速に依頼を処理する義務があると言うべきです。
とりわけ債務整理事件では処理が放置されれば、どんどん利息がかさみ、債務額が膨らんでしまうばかりか、回収できないことに業を煮やした債権者から訴訟を提起されてしまったり、強制執行をされてしまったりする危険があるのです。
事件を誠実かつ迅速に処理してくれる事務所を探さなければなりません。


POINT 1整理された清潔感ある事務所か
第1のポイントは、整理された清潔感のある事務所かどうかです。
整理整頓がゆき届いているかどうかは、その事務所が仕事にどれだけ気を配っているかをはかるバロメーターです。
「よく整理された記録こそが、弁護士にとっての最大の財産である」という言葉があります。
これは海外の弁護士業界に受け継がれている、法律家として成功するための大切な格言なのです。
記録とは、その事件に関係する書類をファイリングしたものです。法律問題の処理にあたって書類の役割は重要であり、契約書一枚の紛失が、依頼者の人生を左右することになってしまいます。
法律家である者は担当事件の記録は整然と整理し、どの書類がどこに綴じられているか常に頭に入れていなければならないのです。
日本でも、例えば裁判所では、訴訟記録のファイリング方法は厳格にルールが定められています。裁判官の担当事件の書類をルール通りにファイルすることが裁判所書記官の職務の重要な一部となっているほどです。
同じ法律家として弁護士、司法書士も同様で、優秀な法律家が担当する事件の記録は必ず整然と整理されています。
「あの書類」と言った時に、すぐにその書類が出て来ずに、「どこだったかな?」などと、書類の束を何度もひっくり返すようでは債務整理を依頼するに足りる法律家ではありません。
事務所の清掃、整理整頓を放置している者は、記録の整理も放置しているものです。事務所が整理整頓されているかどうかは、その弁護士、司法書士が優秀で債務整理を依頼するに足る法律家かどうかを測る目安となるのです。
POINT 2専門家が親身に話を聞いてくれるか
日本弁護士連合会は、債務整理を受任するときには、必ず弁護士本人が債務者と直接に面談して事情を聴取しなければいけないと定めています(※)
※「債務整理事件処理の規律を定める規程第3条」
ところがこれに反し、事務所を訪ねても事務員が対応するだけで一向に弁護士とは会うことができないケース、弁護士と会うことはできたが、ほんの形式的な短時間の挨拶と会話だけで、あとは事務員の対応に終始しているというケースがあります。
もちろん債務整理事件の処理は、ある程度定型化されており、貸金業者との契約内容や借入の金額、返済の経過など数字関係の事情聴取については経験の豊富な事務員であっても全く問題がないことが通常です。
しかし、債務整理が全て定型化された事件処理で済むわけではありません。債務者ひとりひとりの事情、家庭の事情などによる特殊ケースはいくらでもあるのです。
個々のケースの特殊性は、経験があっても事務員ではなかなか気づくことが難しく、やはり専門の教育を受けて資格を認められた弁護士、司法書士でなければ気づけない法律問題が潜んでいることは珍しくありません。
債務整理を失敗に終わらせないためには、十分に弁護士、司法書士に話をして事案の内容を理解してもらうべきであり、事務員だけの対応や弁護士らの形式的な応対だけで、後は流れ作業のように処理してゆく事務所は避けるべきです。
これを判断するには、初回の法律相談から、弁護士、司法書士がきちんとある程度の時間をとって話を聞いてくれたかどうかが最初の目安です。
例えて言えば、最も基本的とされる盲腸の手術でも、外科医師が執刀しなければならないのであって、いかに経験があっても看護師に任せることはできないのと同じなのです。
POINT 3説明はわかりやすいか
債務整理は全て法律問題です。任意整理での債権者との交渉、自己破産での裁判所や破産管財人とのやり取り、個人再生での再生委員とのやり取り、全て専門家でなければ容易に理解できない法律問題についての交渉です。その複雑な法律問題を専門家に任せることができるからこそ弁護士や司法書士に依頼をするわけです
しかし、債務整理をするのは債務者本人であり、成功するか失敗するかに一番大きな利害関係を持ってるのも債務者本人です。
どんなに外科医師が盲腸の治療について高度な専門知識を持っていたとしても、手術を承諾するかどうかは最後は患者本人の意思にかかっています。同様に債務整理も手続の要所要所で決断をするのは債務者本人です。
例えば、弁護士は任意整理にあたり、本人の収入状況に応じて、無理のない分割弁済額を設定できるよう交渉しますが、債権者と合意をするか否かを最終的に判断するのは弁護士ではなく債務者ですから、必ず弁護士はこれで合意して良いかどうかを本人に確認するのです。
本人が判断する前提として、債務整理について弁護士から十分な説明とアドバイスを受けていなくてはなりません。
この観点からは、債務整理を引き受けた以上、「本人は口を出すな。俺に任せておけ。」という古いタイプの弁護士では問題があります。
本人に対し、どのような手続を選択するべきか、そのメリットとデメリットを素人にもわかりやすいように説明し、理解させてくれたうえで最終的な判断をさせてもらえる弁護士、司法書士を選ぶべきなのです。
POINT 4料金体系は明朗か
弁護士の費用はオープン価格であり、個々の弁護士が自由に値段を設定することが許されています。ただし法律事務所毎にその金額、内容が明確になる基準を明示することが義務付けられています。
したがって、まず債務整理の着手金、報酬金、経費などの費用がいくらになるのかを明確に記載した料金表を見せてくれない、料金体系の不明朗な事務所には依頼するべきではありません。
これは弁護士が受任する全ての事件に関するルールですが、特に任意整理と過払い金請求の報酬については、適正な弁護士費用が確保されるように、日弁連が特別な規定(※1)を設けています。
任意整理事件における報酬金の上限(税抜)
解決報酬金(※2) | 債権者1社あたり2万円(商工ローンを除く) |
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減額報酬金 | 減額した額または免れた債務額の10% |
過払い金報酬金 | 裁判で回収した金額の25% 交渉で回収した金額の20% |
※1:「債務整理事件処理の規律を定める規程」、「同規程施行規則」。
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/rules/pdf/kaiki/kaiki_no_93_160606.pdf
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/rules/pdf/kisoku/kisoku_no_145.pdf
なお、着手金についてはこのような金額の規制はありません。
※2:解決報酬金とは、減額や回収額にかかわらず、債権者の数に応じて請求する報酬金です。
この規程は、一般の任意整理の費用の上限額を定めているものなので、特殊な事情がない限りは、これを超える金額を設定している法律事務所は弁護士会との関係でルール違反を犯していることになります。
あくまでも弁護士会の内部ルールに過ぎませんので、それ自体が法律違反というわけではありませんが、弁護士会のルールに反しているということは、いつ弁護士会から違反を指摘され懲戒処分を受けるかわからないということです。
懲戒処分の中には業務停止処分も含まれており、あなたが債務整理を依頼した弁護士が業務停止処分を受けてしまえば、債務整理は進めることができなくなってしまいます。
そのような事態を避けるためにも、弁護士会の報酬規定のルールに違反している弁護士事務所には債務整理を依頼するべきではありません。
